個人事業主が納めるべき税金にはどんな種類がある?節税対策のポイントも解説

個人事業主が事業を営むうえで忘れてはならないのが、税金の支払いです。事業で得た利益に応じて、さまざまな税金を納めなければなりません。今記事では、個人事業主が納めるべき税金にはどのような種類があるのか、節税対策に役立つポイントも合わせて詳しく解説します。
個人事業主が納める税金の種類と納付期限
まずは個人事業主が納めるべき税金の概要と、それぞれの納付期限について確認してみましょう。
所得税(個人事業主でなくても居住地域に納税の義務があります)
所得税は1年間の事業で得た所得(売り上げから経費を引いた分)に対して課される税金です。税率は所得金額によって異なり、所得金額が大きくなればなるほど税率もアップする仕組みになっています。毎年2月16日から3月15日までの確定申告期間内に納付します。
住民税(個人事業主でなくても居住地域に納税の義務があります)
住民税も所得税と同様に、事業で得た所得に対して課される税金です。その年の1月1日時点で居住している自治体に対して支払うことになり、年度の途中で他の自治体に引っ越した場合は翌年から納付先が変わります。一括納付と4期分割納付が選択でき、一括納付の場合は6月末まで、分割納付の場合は6月末、8月末、10月末、翌年1月末までのタイミングで納付します。
個人事業税(個人事業主で該当する職種であれば納税が必要です)
個人事業税は法定業種とよばれる70の業種に該当する場合にのみ課される税金です。そのため、法定業種以外に従事する個人事業主は、個人事業税を支払う必要はありません。支払額が1万円を超えた場合は8月末と11月末の2回に分けて納付しますが、1万円以下の場合は8月末までに一括で納付します。
消費税(個人事業主のうち前々年度の消費税対象の売り上げが1000万円を超えた場合に納税が必要です)
消費税は、前々年度の消費税対象の売り上げが1,000万円を超えた場合に納めます。中小事業者の場合は、売り上げに課税された消費税に対して一定のみなし仕入率で計算する簡易課税制度が設けられています。消費税の納付期限は3月末までです。
国民健康保険税(国民健康保険料)(個人事業主として納税(雇用保険被保険者であれば必要なし))
国民健康保険税は国民健康保険の保険料として支払う税金で、世帯主がまとめて支払います。自治体によっては国民健康保険料と呼ばれることもあります。7月末から翌年2月末までの複数回に分けて納付します。分割回数は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
固定資産税(個人事業主でなくても不動産を所有する人全員に納税義務があります。事業用の資産(自社ビル等)として保有している場合に納税が必要です)
土地や社屋、または自宅を保有している場合には固定資産税がかかります。複数回に分けて納付しますが、納付期限や分割回数については自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
自動車税(個人事業主でなくても車所有者は納税義務があります。事業用として保有している場合には個人事業主としての納税が必要です)
自動車を保有している場合には自動車税を納める必要があります。自動車税は5月末までに一括納付します。
以下、改めて一覧でまとめました。
納付対象者 | 納付期限 | |
所得税 | 一定の所得がある人 | 3月15日 |
住民税 | 1月1日の時点で当該自治体に居住する住民 | 一括納付:6月30日 分割納付:6月30日、8月31日、10月31日、翌年1月31日 |
個人事業税 | 法定業種の70業種に該当する場合 | 8月31日、11月30日 |
消費税 | 前々年度の消費税対象の売り上げが1,000万円を超えた事業者 | 3月31日 |
国民健康保険税(料) | 国民健康保険の被保険者 | 自治体によって異なる |
固定資産税 | 土地や社屋または自宅を保有している者 | 自治体によって異なる |
自動車税 | 自動車を保有している者 | 5月31日 |
※納付期限が土日祝日の場合は次の平日までとなります。
個人事業主が納める各種税金の計算方法
続いて、個人事業主が納める税金の金額がどのように算出されるのか、詳しく見てみましょう。
所得税
所得税は以下の式に沿って税額を算出します。
1)課税所得金額(A)=(売上―経費)―所得控除額
※所得控除額とは、基礎控除や社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、医療費控除、寄附金控除などの合計額
2)基準所得税額(B)=課税所得金額(A)×所得税率―所得控除額
3)復興特別所得税額(C)=基準所得税額(B)×2.1%
4)納付する所得税額=基準所得税額(B)+復興特別所得税額(C)
以下の所得税率を参考に、計算してみましょう。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
住民税
住民税は、上記で計算した所得割額と均等割額(住民税の基本額のようなもの)で算出されます。ただし、所得税とは異なり、所得金額に応じて税率が変動することはなく、一律で10%となっています。
自治体に居住する人に対して一律で課税される均等割額は、都道府県民税が1,500円、市区町村民税3,500円が基本ですが、地域によって金額が異なります。
所得割額(A′)=(課税所得金額(上記A)×10%)―税額控除
均等割額(B′):都道府県民税1,500円 市区町村民税3,500円など
納付する住民税=所得割額(A′)+均等割額(B′)
個人事業税
個人事業税は、上述したように法定業種の70業種に該当する場合にのみ納付します。業種によって税率が異なるため、該当する場合には確認しておきましょう。290万円の事業主控除があるため、所得が290万円未満の個人事業主は、個人事業税を納める必要はありません。個人事業税の金額を算出する計算式は以下のとおりです。
納付する個人事業税=(売上-経費-事業主控除(290万円)+青色申告特別控除額-各種控除額)×税率
東京都の例では、個人事業税の税率は以下のように区分されています。

消費税
個人事業主を含む中小事業者は、簡易課税制度により、売り上げに課税された消費税に対して一定のみなし仕入率で納付する消費税の金額を計算します。みなし仕入率は業種によって割合が異なるため、以下の表を参考に計算してみましょう。
納付する消費税=預かった消費税額-(預かった消費税額×みなし仕入率)
業種 | みなし仕入率 |
卸売業 | 90% |
小売業 | 80% |
農林・漁業、建築業、製造業 | 70% |
飲食店業 | 60% |
運輸・通信、金融、保険、サービス業 | 50% |
不動産業 | 40% |
国民健康保険税(国民健康保険料)
国民健康保険税は、全ての世帯にかかる「医療分保険料」と「後期高齢者支援分保険料」、40歳から64歳の被保険者がいる世帯にかかる「介護保険料」がそれぞれ算出され、その合計金額を国民健康保険税として納付します。
国民健康保険税は自治体および年度によって計算方法が異なります。自治体のホームページでは簡易見積もりに対応しているところも多いため、確認してみましょう。
固定資産税
固定資産税は市町村が算定する固定資産評価額をもとに計算されます。固定資産評価額は3年ごとに評価替えが行われ、そのタイミングで固定資産税の金額も変動します。税率は自治体によっても異なりますが、多くは標準税率である1.4%を採用しています。
納付する固定資産税=固定資産評価額(課税標準額)×税率(標準税率:1.4%)
自動車税
自動車税は保有している車の排気量によって税額が異なります。法改正により2019年10月1日以降に新車登録された車は、軽自動車と6,000cc以上のクラスを除き減税となっています。金額は固定で、所得額によって変動することはありません。具体的には以下のような金額となっています。
排気量 | 2019年9月30日以前に新車登録された車 | 2019年10月1日以降に新車登録された車 |
軽自動車 | 10,800円 | 10,800円 |
660~1,000cc | 29,500円 | 25,000円 |
1,000~1,500cc | 34,500円 | 30,500円 |
1,500~2,000cc | 39,500円 | 36,000円 |
2,000~2,500cc | 45,000円 | 43,500円 |
2,500~3,000cc | 51,000円 | 50,000円 |
3,000~3,500cc | 58,000円 | 57,000円 |
3,500~4,000cc | 66,500円 | 65,500円 |
4,000~4,500cc | 76,500円 | 75,500円 |
4,500~6,000cc | 88,000円 | 87,000円 |
6,000cc超 | 111,000円 | 110,000円 |
各種税金の免除制度
税金の支払いは翌年に納付書が発行されるため、タイミングによっては支払いに負担を感じることがあるかもしれません。しかし、一定の条件を満たせば税金がかからなくなるといった免除制度があります。税金の免除が受けられる条件を見てみましょう。
確定申告において赤字となる場合
収入よりも支出が多く利益が出ていない「赤字」として確定申告を行った場合、所得税および住民税が免除されます。青色申告では3年間にわたって赤字を繰り越すことが可能で、その間は黒字分と相殺することで納める税金が安くなります。ただし、あくまでも青色申告者のみに限定されるもので、白色申告では繰越控除が認められません。
控除額が大きい場合
青色申告では、最大65万円の特別控除が認められます。基礎控除の38万円と合わせて103万円(令和2年度分以降は、青色申告特別控除が55万円、基礎控除は最大48万円。e-Taxでの申告なら青色申告特別控除は65万円に据え置き)、さらに配偶者がいれば配偶者控除として最大38万円が加算され、合計141万円までの所得であれば所得税が非課税となります。
事業開始から2年間または課税売上高が1,000万円未満は消費税免除
個人事業主が消費税の課税対象となるのは、前々年度の課税売上高が1,000万円以上の場合です。そのため、売上高が1,000万円未満の個人事業主および起業から2年未満の個人事業主は消費税が免除されます。
事業所得が290万円以下は個人事業税免除
上述したように、個人事業税の控除額は290万円のため、事業所得が290万円未満または特定業種に該当しない個人事業主は免税対象となります。
個人事業主ができる6つの節税方法
事業主としての社会的貢献を考えれば、正しく確定申告を行い、納めるべき税金はきちんと納めることが大前提です。しかし、収入が増えるほど税金も高くなってしまうため、その分、事業に使える資金が少なくなってしまいます。翌年の事業のためにできるだけ資産を残したい個人事業主に向けて、節税に役立つ6つの方法を紹介します。
青色申告
個人事業主が節税を考えるなら、青色申告での確定申告は必須と言えます。個人事業主の確定申告には白色申告と青色申告が存在しますが、白色申告よりも青色申告の控除額が大きいため、節税対策につながります。
また、青色申告は、青色事業専従者給与や赤字の3年間繰り越しが認められるなどのメリットもあります。青色申告は複式簿記による記帳が求められるなど白色申告に比べて手間がかかりますが、所得税はもちろん住民税の軽減にもつながります。
事業に関連する出費は経費として計上
OA機器や事務用品、交通費、取引先や顧客との接待で使用した交際費など、事業にかかった経費を適正に計上することで節税対策となります。当然ながら、事業に関連のない出費は経費として認められません。私用での出費と混同しないことが大切です。経費計上を行う場合には、どのような目的や用途で出金したのか、詳細な記録を残しておくとよいでしょう。
車にかかる費用の見直し
事業で使用する車を購入した場合、通常は、減価償却費として複数年にわたって経費を計上するのが一般的です。しかし、個人事業主の場合は仕事とプライベート用の線引きが難しく、全額が経費として認められないこともあります。そこで、検討したいのがカーリース契約です。カーリースなら、リース料金として全額を経費に計上できるため節税効果が期待できます。
カーリースの経費計上について、「個人事業主が計上できる経費とは?車関連の経費計上のポイントも解説」こちらの記事でも紹介しています。
小規模企業共済
小規模企業共済とは、個人事業主のための積立型退職金制度です。小規模企業共済の掛金は毎月1,000円から70,000円までの範囲で自由に設定でき、全額が所得控除の対象となります。事業を廃止したときに、共済金を受け取れます。
iDeCo
iDeCoとは、国民年金とは別に個人で年金を積み立てる制度です。原則として60歳未満であれば全ての方が加入でき、掛金は月額5,000円以上から1,000円単位で自由に設定できます。ただし、業種によって掛け金に上限があるため、条件を確認しておきましょう。小規模企業共済と同様、iDeCoの掛金も全額所得控除の対象となるため節税効果が期待できます。
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済とは、取引先の事業者が倒産した場合に無担保で掛金の10倍まで借入ができる制度です。掛金は月額5,000円から20万円まで任意に選択でき、全額が必要経費として認められます。
税金の正しい知識を身につけ節税につなげよう
個人事業主が納めるべき税金にはさまざまな種類があり、算出方法も複雑で分かりにくい部分が多いかもしれません。しかし、事業を営む以上は「知らなかった」ではすまされません。売り上げアップに努めると同時に、税金はしっかり納める必要があります。事業継続のために必要な資金を賢く残したい場合には、節税対策も忘れずに行いましょう。
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